歴史と文化


写真: David Trood 

歴史
今から約4~5,000年前、最初の住民がカナダからチューレ地方へ渡ってきました。
現在のグリーンランド人は9世紀頃にやってきたチューレ文化の系統です。
ほぼ同じ頃、バイキングとして知られるノースマンもグリーンランドへ渡ってきました。
今でも南グリーンランドやヌークの近くには彼らの遺跡があり、観光スポットとなっています。

これまで、グリーンランドにはイギリスや北欧からの遠征隊がたびたび入り、1600~1700年代には主にヨーロッパの捕鯨船が生活の糧を求めてやってきました。
捕鯨船は定期的に訪れたものの、デンマーク/ノルウェー系の宣教師ハンス・エゲデが移住するまで永続的なつながりはありませんでした。

ハンス・エゲデは1721年、ノースマンを探すために現在のヌーク(グリーンランドの首都)へ来ましたが、見つけることはできませんでした。しかし彼はイヌイットをキリスト教へと改宗させました。
現在、グリーンランド人の多くは福音ルーテル派のキリスト教徒です。

1721年から1953年まではデンマークの植民地でした。
1953年におこなわれたデンマークの憲法改正により、植民地支配は終了。グリーンランドはデンマークの郡(日本の県に相当)となりました。

1979年には内政の大部分に権限を持つようになり、2009年に再び権限が拡大され、現在は外交と安全保障を除くすべての社会領域を管轄しています。
言い換えるならば、2009年にグリーンランドは公式にデンマーク王国の自治領となったのです。

第二次世界大戦以前のグリーンランドは、閉鎖的で生活水準も低い国でした。
1906年に国の南部で牧羊が始まり、1908年には商業的な漁業が開始されました。

第二次世界大戦中、グリーンランドはアメリカとイギリスをつなぐ連合国空路のハブとなりました。しかしデンマークがドイツに占領されたため、デンマークとの接触が完全に断たれてしまいました。そこでグリーンランド政府はアメリカに協力を求め、アメリカはグリーンランドの防衛に合意しました。

戦後は国の近代化を支持した市民運動が起こり、1950年代には現在の福祉システムの基礎が築かれました。

グリーンランドは1985年にEUを脱退し、現在は加盟していません (これまでにEUを脱退した唯一の存在となっています。)
しかし漁業や教育などの分野において、EUとは双方向合意を締結し、緊密な関係を維持しています。



写真: Andre Schoenherr 

文化
音楽、ダンス、演劇、文学はグリーンランドの伝統文化ならびに現代文化の中心です。
人口規模に対して音楽家の数が多く、世界的に注目されている芸術家が大勢います。

神話や伝説は常に重要な役割を果たしてきました。また文学はさまざまな民話の口承が起源となっています。多くはのちに文字化され、今では書籍となっています。

昔から民話を語り合ったり演技を見せ合ったりする豊かな文化はあったものの、1984年までプロの劇団はありませんでした。
2011年になって初めてグリーンランドに演劇学校が開設されました。

工芸にも長い伝統があります。
色鮮やかな毛織物(アノラック)やハンドメイドのブーツ(カミック)は、伝統衣装の一部です。

 

厳寒のグリーンランドでは何百年も前からアザラシなどの動物の毛皮が必需品として使われてきました。
しかし近年においてはデザインが目覚ましい発展をとげています。
自国と世界とのスタイルを融合させ、毛皮や革を独創的に取り入れたハイレベルでクリエイティブなデザインが登場しているのです。


伝統的なアノラックとカミックを着たグリーンランドの少女。 写真: Julia Ridlington