福祉と教育

教育
デンマークの公立校制度は、1年間の幼児教育(プレスクール)と9年間の初等・下級中等教育から成り、中学校の10年生は選択制となっています。
つまり、すべての子どもは6才から16才まで、基礎的な義務教育を受けることになっているのです。
デンマークでは50%以上の生徒が上級教育に進んでいます。

すべての公立校の経費は国と自治体が全額を負担し、学費は無料です。
大学においても、デンマーク、北欧諸国、EU加盟国の国民であれば無料です。
私立校にも政府の補助金が拠出され、一部が授業料で賄われています。

デンマークの教育の質は、さまざまな形で保証されています。
教育システムは主に国が管轄しており、全ての公立教育機関は継続的に承認ならびに評価を受けています。
また生徒側も学習の過程に積極的に参加し、責任を持つことが奨励されています。
そのため、多くのデンマークの学生は意欲的に教育を受けており、これがまた教育の質の向上につながっているのです。

デンマークの高等教育は、伝統的に高い学業水準を目指しながら、総合的な学習やプロジェクト活動も取り入れています。このような環境は、学生の意欲を大いに刺激します。
国際色が豊かな高等教育機関では、多くの授業を英語で行うなどして海外からの学生にも幅広い機会を与えています。
デンマークで学んでいる3,500人以上の外国人学生を対象に行った調査では、78%がデンマークを留学先として推薦し、93%が「デンマークは安心して暮らせる国だ」と答えました。


福祉
デンマークの労働市場について語る際、よく使われるのが「フレキシキュリティ(柔軟的失業者保障政策)」という言葉です。この制度により、グローバリゼーションの課題に対処しつつ、安定的な経済成長と雇用を守っています。

フレキシキュリティはフレキシビリティ(柔軟性)と、セキュリティ(保障)とを組み合わせた造語です。
デンマークの場合、これに「積極的な労働市場政策」という第3の要素を追加し、「フレキシキュリティの黄金の三角形(ゴールデン・トライアングル)」と呼ばれるシステムを築いています。

三角形の1点は、柔軟な雇用調整を認める規則です。これにより、業績が悪化した時は従業員を解雇し、改善した時は新たに雇うことが容易くなります。
2点目は、法で定められた失業給付による保障です(低賃金労働者の場合は賃金の90%)。
3点目は積極的な労働市場政策です。すべての失業者にアドバイスを与え、仕事を紹介し、訓練を提供する、という効果的なシステムで、国はGDPの約1.5%をこの政策に充てています。

フレキシキュリティの目的は、仕事の保障よりも雇用の保障を促進することです。
このモデルは、雇用者には「柔軟な労働力の確保」というメリットを、被雇用者には「失業給付による生活保障」と「積極的な雇用政策」というメリットを与え、財政の安定化につなげています。

2007年12月、欧州理事会においてEU加盟国が「成長と雇用のためのリスボン戦略」の目標達成に向けた改革をおこなう際、このフレキシキュリティの共通原則をガイドラインとするよう定めた決議を採択しました。